日本型クアオルトとは
日本型クアオルト先進地 上山の取り組み

日本型クアオルト先進地 上山の取り組み

取り組むきっかけ:ドイツや由布院との交流

ドイツや由布院との交流

 ドイツと日本では医療制度が異なるために、ドイツと同じ制度や仕組みをそのまま日本に導入するのは困難です。
 そのため、ドイツをお手本としながらも、日本の社会制度や国民性、自然環境に合わせて取り組まれているのが、健康づくりを目的とした日本型クアオルトです。
 日本型のクアオルトは、1971年(昭和46年)、大分県の旧湯布院町(現由布市)からはじまり、環境保全や景観形成、温泉を活用した水中運動を中心にまちづくりとして継続されています。
 山形県上山市は、蔵王連峰の麓にあり、山岳信仰の三大聖地のひとつである出羽三山の出入り口として、557年の歴史ある温泉地、城下町、宿場町です。故郷の歌人斎藤茂吉が、ドイツのミュンヒェン留学中にドナウ川の源流の町、ドナウエッシンゲン市(※1)を訪ねた縁で1994年(平成6年)より国際交流がはじまり、ドイツの様々な制度や温泉を活用する仕組みの調査を開始しました。その後、温泉地の活性化や官民が連携したまちづくりに取り組み、温泉のまちづくりのお手本であり、日本のトップランナーである旧湯布院町の由布院温泉の方々と、2000年(平成12年)から交流が始まりました。

※1:ドナウエッシンゲン市は、南ドイツのクアオルトの数が一番多いバーデン・ヴュルテンブルク州の黒い森地方にあるまちです。

地方の元気再生事業で、調査研究から実践へ

地方の元気再生事業で、調査研究から実践へ

 2005年(平成17年)からは、ドイツのクアオルトを研究する専門家の調査報告を受け始めました。2008年(平成20年)、内閣府募集の「地方の元気再生事業」がスタート、地方自治体がこれまで取り組んだことのない新しいアイデアを提案し、国の予算で具体化するという補助事業でした。
 上山市が取り組んできたクアオルトの調査や由布院温泉で取り組まれているクアオルト事業などを基盤に、「気候性地形療法」(※2)と温泉を活用しながら、交流人口の拡大や健康の仕組みづくりをまとめ、上山市の提案が採択されました。

※2:気候性地形療法とは、野山を歩いて心臓リハビリや高血圧の治療に活用し、運動効果やメンタルヘルスにも効果が期待される手法。

最初は、コース設定、そしてガイドの人材育成

上山市のウオーキング参加者の実績

 2008年(平成20年)には、気候性地形療法を見出した、ミュンヒェン大学のアンゲラ・シュー教授から西山・葉山・蔵王高原坊平の3ヶ所3コースを気候性地形療法の専門コースとして認定を受けました。このコースを活用して、4週間の効果検証を実施。
 翌2009年(平成21年)には、補助事業が継続して採択され、新たに3ヶ所5コースが認定を受け、合計5ヶ所8コースが気候性地形療法の専門コースとなりました。
 そのほか、気候性地形療法と温泉療法と併用した効果検証や、ドイツでの気候療法士の講習受講など様々な取り組みを実施し、この年の秋から、住民向けに、気候性地形療法を基本とした「クアオルト健康ウオーキング」という健康づくりの提供を始めました。

360日歩く仕組みを構築した自治体

コースとガイドを活用し、住民の健康づくりスタート

コースとガイドを活用し、住民の健康づくりスタート

 そして、2010年(平成22年)からは、地域住民の健康づくりを中心に事業を展開し、土日のウオーキングを開始しました。翌年、東北の大震災の直後、2011年(平成23年)の4月から、上山市役所に専門部署のクアオルト推進室を設置し、年間360日開催する「毎日ウオーキング」を開始。現在も継続しながら住民の健康寿命の延伸に取り組んでいます。また、2011年(平成23年)には、札幌市立大が心理的な効果の調査研究も実施しました。その中で、クアオルト健康ウオーキングは、ウオーキング後の気分改善に効果があること、翌日においてもその効果が持続すること、また主観的身体状況についても、ウオーキング前に比べて改善することが報告されています。(※3)
 最初の2カ年、国の補助を活用し、コースの設定やガイドの人材育成に取り組み、様々な団体や医療機関、まちづくりグループ、産業との連携に着手しました。その後、住民の健康づくりを推進し、段階的に、徐々に活動を大きくしています。

※3:2011年度上山市クアオルト健康ウオーキング質問紙調査報告
町田佳世子1 上田裕文1 河村奈美子2 小関信行3(1札幌市立大学デザイン学部、2 札幌市立大学看護学部、3 クアオルト研究室)

地域の健康づくりから交流人口の拡大へ「いつでも、誰でも、一人でも」

毎日ウオーキング参加者数

 年間360日開催する「毎日ウオーキング」は、有償のウオーキングです。ドイツの気候性地形療法を基本としたウオーキング指導を専門ガイド2名が行い、毎日コースを変えて実施されています。誰でも予約なしで参加することができます。
 運動習慣を身につけるには、各自の体力に合わせた無理のない、運動リスクの少ない運動をすることが基本です。また、毎日同じコースでは、歩く楽しさが減少してしまいます。そのため、上山市では、毎日コースを変え、好きな時に好きなコースを歩くことができるように対応しています。
 2018年度末で、ウオーキング全体では13693人の参加者ですが、毎日ウオーキングの参加者は5257人となり、60歳代が約半分を占めています。また、4分の3近くは女性が占め、地域住民向けの健康プログラムでありながら、約半数近くは、市外からわざわざ訪れて参加している傾向があります。(グラフ参照)
2016年から有償でのクアオルト健康ウオーキング参加者が横ばいになっていますが、歩き方やコースを理解したため、自分の都合の良い時間に歩く人が増えており、全体のウオーキング人口は年々増えている状況です。
 この健康プログラムは着実に、周辺自治体にも広がり、上山市が健康づくりの中心地としての役割を担っている状況です。これは、クアオルト健康ウオーキングが、生活習慣病のみならずメンタルヘルスにも効果があるため、楽しく無理せず取り組むことができ、行動変容に繋がっているためと考えられます。

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